①皮膚腫瘍
皮膚腫瘍は、皮膚の表皮からすぐ下の真皮層までの間に発生する腫瘍の総称です。
皮膚表面から「そのものに触れる」「そのものが目に見える」と感じられます。
以下のような種類があります。
・脂漏性角化症(老人性いぼ)
中高年に多く見られる、茶色~黒色の盛り上がった皮膚のしみです。かゆみを伴ういぼが全身に発生した場合は消化器系のがんが合併している可能性もあります。
・色素性母斑(いわゆる“ほくろ”)
メラニンをつくる細胞が局所的に増えたもので、部位により形や成長は様々です
左右非対称、色むら、不整な輪郭、急な変化がある場合は悪性を否定するために検査が必要です。
・軟線維腫(スキンタッグ)
首や脇、まぶたなどにできる、やわらかく小さな皮膚の突起です。加齢や摩擦により増えることが多く、見た目や引っかかりが気になる場合に切除します。
良性腫瘍は症状改善や悪性鑑別のため手術が必要です。
当院では摘出術と必要に応じて再建術を行っています。
全身精査が必要な場合や当院で治療困難な場合は大学病院などにご紹介いたします。
【40代 女性 ほくろ 単純切除 手術直後】
鼻の近くの大きいほくろの手術を行いました。
【術中経過】
局所麻酔を行い、十分な深さで摘出します。鼻の輪郭に一致する切開を行い、傷跡に配慮しました。
【術後経過】
術後1週間程度で抜糸を行います。
【40代 女性 ほくろ CO2レーザー 術後半年】
顔面のほくろの除去を行いました。
【術中経過】
局所麻酔を行い、CO2レーザーで削ります。ややへこんだ傷となります。
【術後経過】
当日より特殊な被覆材を貼付し、約2週間で治癒します。その後、色素沈着予防のハイドロキノンを塗布します。削りが甘いと再発することがあります(点線)。
【40代 女性 ほくろ 摘出術+皮弁術 術後4ヶ月】
鼻の大きいほくろの手術を行いました。
【術中経過】
局所麻酔を行い、ほくろを十分な深さで摘出しました。そのまま縫い閉じると鼻の変形を来すため、周囲の組織を移動する皮弁術で縫い閉じました。
【術後経過】
術後2週間程度で抜糸を行います。傷跡に対するケアを行い、徐々に傷跡は目立たなくなります。
②皮下腫瘍
皮下腫瘍は、皮膚の下にある皮下脂肪層や筋膜の上にできる腫瘍です。
表面からは「少しふくらんでいる」「触ると動くしこり」などとして感じられます。
以下のような種類があります。
・脂肪腫(リポーマ)
やわらかく、可動性のあるしこり。脂肪細胞が増殖した良性腫瘍で、皮下腫瘍の中で最も一般的です。稀に境界悪性のこともあるため注意が必要です。
・粉瘤(アテローム)
皮膚の下にできる袋状の腫瘍。内容物は角質などで、炎症を起こすと腫れて痛むことがあります。
・皮膚線維腫
やや硬めのしこりで、ゆっくりと大きくなる傾向があります。外傷後に発生することもあります。
・神経鞘腫や血管腫など
皮下のさまざまな組織から発生する疼痛などを伴う良性腫瘍です。
良性腫瘍は症状改善や悪性鑑別のため手術が必要です。
当院では摘出術と必要に応じて再建術を行っています。
全身精査が必要な場合や当院で治療困難な場合は大学病院などにご紹介いたします。
【60代 男性 粉瘤】
背中に異臭のするできものが二か所あり、その一つは赤く腫れ痛みがありました。
【治療方針】
粉瘤は異臭を放つ皮膚のカスがたまる袋状のできもので、普段は無症状で経過しますが、炎症をおこし赤く腫れて痛みを伴います。
炎症を起こした状態での摘出は大きく切除せざるを得ないため、一般的には切開を行い炎症を落ち着け小さくしたのちに、根治的な摘出術を行います。炎症がない状態であれば最小限の切開で摘出が可能ですので、見つけ次第摘出を推奨します。
手術は摘出し単純に縫い閉じます。
【60代 男性 粘液嚢腫 摘出術+皮弁術 術後4ヶ月】
指にゼリー状物質が排出されるものができました。
【術中経過】
指全体に伝達麻酔を行い、できもの十分な深さで摘出します。組織の余裕がなく縫合できないため、周囲の組織を移動する皮弁術で縫い閉じました。
【術後経過】
術後2週間程度で抜糸を行います。傷跡に対するケアを行い、徐々に傷跡は目立たなくなります。
【50代 女性 脂肪腫 手術直後】
肩に盛り上がるやわらかいできものあり、動作の邪魔になっていました。
【術中経過】
局所麻酔を行い、できものより小さな切開を行います。周囲の膜からできものを剥離して摘出します。 中のスペース(死腔) を埋めるように縫い閉じます。
【術後経過】
死腔に血液などがたまらぬようガーゼなどで圧迫をして生活し、術後1-2週間程度で抜糸を行います。
③皮膚悪性腫瘍
皮膚にできたしこりやほくろ、ただれなどが「がん」であることがあります。
形がいびつだったり、急速に増大傾向である場合には注意が必要です。
以下のような種類があります。
・基底細胞癌(BCC)
皮膚癌のうち最も高頻度で、緩徐に進行し、再発しやすいのが特徴です。日光にあたる部位にできやすいです。
・有棘細胞癌(SCC)
皮膚や粘膜にできる悪性腫瘍で、基底細胞癌より進行が早く、転移を起こすこともあるため注意が必要です。
・悪性黒色腫(メラノーマ)
ほくろに似ていますが、非常に悪性度が高く、早期発見・早期治療が生命予後を大きく左右します。
・前癌病変
ボーエン病 、日光角化症 、白板症などは放置により有棘細胞癌に進行する可能性があります。
また、熱傷瘢痕(やけどあと)、慢性創傷(きず)、褥瘡(床ずれ)、慢性膿皮症などは悪性ではありませんが、炎症を繰り返すことで癌化する可能性があります。
皮膚癌は、早期に発見・治療すれば完治が可能です。
当院では摘出術と必要に応じて再建術を行っています。
全身精査が必要な場合や当院で治療困難な場合は大学病院などにご紹介いたします。
【80代 男性 基底細胞癌 摘出術+植皮術 術後半年】
徐々にできものが大きくなってきたと相談がありました。ダーモスコピーで基底細胞癌の所見があり手術を計画しました。
【術中経過】
できもの周囲に距離をとり皮下組織で切除を行います。組織の余裕がなく縫合できないため、耳の裏より皮膚移植を行いました。
【術後経過】
術後2週間程度で抜糸を行います。傷跡に対するケアを行い、徐々に傷跡は目立たなくなります。
【80代 女性 ボーエン病 摘出術+皮弁術 術後半年】
他院で赤みに対して軟膏を長期に塗布しても改善がないと相談がありました。有棘細胞癌となるリスクがあり手術を計画しました。
【術中経過】
赤み周囲に距離をとり皮下組織で切除を行います。そのまま縫合すると変形のリスクが高いため、皮弁術で縫い閉じました。
【術後経過】
術後2週間程度で抜糸を行います。傷跡に対するケアを行い、徐々に傷跡は目立たなくなります。